カバレッジモデルを導入してよかったことと感じた課題

前回の記事で最後に、次はNPSについて書きたいと言っていたのですが、NPSをはじめる重要なきっかけとなったカバレッジモデルについて先に触れることにします。

カバレッジモデルとは?

カバレッジモデルは、青い本では、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという3つのモデルに分けて触れられています。 顧客をいくつかのセグメンテーションに分け、CRE(特にカスタマーサクセス)としてどのようなものをユーザーに対して提供するか(内容や頻度)を戦略的に決めるためのモデルです。 Mackerel では、青い本を参考に、ざっくりと以下のように定義しています。

  • ハイタッチ
    • 四半期〜半期に一度はお伺いしてコミュニケーションする
  • ロータッチ
    • 一年に一度はお伺いしてコミュニケーションする
  • テックタッチ
    • メールや電話、公式イベントなどでコミュニケーションする

上に行くほど、1つのユーザーへのコミュニケーションの頻度や深さが高まり、下に行くほど対象となるユーザー数が増えるというピラミッドの構造になっています。

なぜ導入したか

Mackerel の CRE チームはまだまだ小さいチームなので、残念ながら全てのユーザーにハイタッチを行うことはできません。 Mackerel は BtoB のサービスですが、サーバー台数をベースとした従量課金で少額でもはじめられるため、個人で使っていただいているユーザーもいます。ユーザーによって、1台から数千台と、利用状況はさまざまです。サーバーが1台の環境と、数千台の環境では、システムのアーキテクチャはもちろん、使う人の体制や使っている機能、監視に期待することなども大きく違います。 そういった背景から、すべてのユーザーがハイタッチを求めている、とは限らないだろう、という仮説もありました。

私たちには、ハイタッチないしはロータッチができるユーザーを選択していく必要がありました。 そこで、私は、顧客を売上や利用機能、過去のコミュニケーションの状況などを可能な限り洗い出して一定のルールに従ってセグメンテーションし、カバレッジモデルを導入することにチャレンジしました。 主に私はロータッチを担当し、そのユーザー群に対して、1年に1回は最低でもお会いすること、ということを目標に訪問を続けました。

カバレッジモデルを取り入れるよさ

カバレッジモデルを取り入れて一番変化したのは、ユーザーの訪問が、これまで、少なからず過去の経緯や担当者の感覚に頼って判断して行われていたものが、他の人にも説明しやすい仕方で(とはいえ、ゆるやかに)ルール化されて、一人でも判断して進められるようになったということでした。 また、そもそもこのカバレッジモデルを立てるために行った、ユーザー状況の精査ということによって、自分たちの顧客にはどういった人がいるのか、どういう課題を抱えているのか、ということを知ることができました。 精査する際は、以下のような項目を洗い出しましたが、かなり地道で時間のかかる作業でした。それでも、やってよかったと思っています。

  • 顧客窓口
  • 利用深度
  • 運用・監視の課題
  • 次のステップ --- など

カバレッジモデルを取り入れても解決できなかった課題

カバレッジモデルを取り入れることで、悩まずにユーザーを訪問できるようになりました。ただ、このあたりから私の中で、いくつかの新しい課題が芽生えはじめました。 それは、こちらからアポイントメントをとって訪問するタイミングが、ユーザーにとってほんとうにうれしいタイミングとは限らないのではないか?という疑問です。 というのも、訪問していろいろとヒアリングしていると、以下のようなことをおっしゃるユーザーの方もおられました。

  • 困っていたことがあったけど忘れてしまった
  • 困っていたけど、なんとか自分で解決した(ほかのツールで解決した)
  • 今後頼るかもしれないが、今はまだ困っていることはない --- など

これらのコメントをもらう度、わたしの中には以下のようなことが浮かんでいました。

  • 訪問するタイミングが遅いのではないか?
  • もっとユーザーが求めるタイミングでコミュニケーションできたほうが、有意義なのでは?

訪問のような濃い、かつお互いのコスト(時間)がかかるようなコミュニケーションをしているのに、ポイントをはずしているのではもったいない、という気持ちになりました。

NPSへのモチベーションの高まり

こういうことがあって、私の中で、NPSを取得することへのモチベーションがじわじわと上がっていきました。つまり、ユーザーの状況を正しく理解して、ちょうどよい、痒いところに手が届くタイミングで訪問したい、という気持ちが高まったのです。NPSが顧客の状況を正しく知るための、一つの指標になりうると考えはじめました。

実際には、Mackerel のユーザーの状況を正しくつぶさに知るための指標は、これ以外にも多くあります。じゃあなぜNPSからはじめたの?ということろをお話したいのですが、今日はこの辺りまで。次の記事に続きます。